帰還
私たちがブランチを食べていると夫が帰ってきた。
「早かったわね」
「うんうん」夫は気もそぞろにコーヒーを飲んだ
「で?」
「ペット博にはすごく沢山ネコがいた」
「で?」
「ペットショップにはアメリカンショートヘアーがいた」
「ふーん」
「アビシニアンはいなかった」
“やっぱりね”私は急激に興味を失ってパンを小さくちぎっていた。ネコのいる生活も素敵だったかも・・・
「ネコ買ったの?」娘が身を乗り出してきた。
“買うわけないじゃない・・・”いいかけた言葉を飲み込んだ。夫の目がきらきらしていたのだ。
「うん」夫は胸を張っていった。
「うんって、いなかったんでしょ?!」私の目は20度つりあがった。
「いなかったけど、取り寄せOKだった」
「見ずに買ったの?!」30度つりあがった。
「あのね、4月の最初に生まれたばかりで、雌のルディで、名古屋のブリーダーにいるって、父親はチャンピオンだって」
チャンピオンだろうとルディだろうとレッドだろうと大切なペットを見もしないで買うなんて・・・そう思ってにらみつけた夫の顔はとても幸せそうだった。出かけたときと同じ小学生の顔だ、幸せと光に満ちた小学生の顔・・・
そこに大きな欠伸をしながら息子が起きてきた。
「何かあったの?」
私は満面の笑みを浮かべて言った。
「ネコが来るの」
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